9月25日の自民党総裁候補討論に昆虫食
自民党総裁候補らによるオンライン討論会3日目の9月25日に、昆虫食に関する質問がありました。
いささか残念な印象を受けたので、そのコメントを。
小学1年生の男児タカオミくんによる
「大人になったら、虫を食べなければいけなくなるのか」
という質問があり、4人の自民党総裁候補が回答しました。
自民党によるyoutubeの動画。5:38から12:36です。
司会の方によると、タカオミくんは学校で、タンパク質の危機が訪れる、昆虫を食べなければいけなくなる、という話を聞いたそうです。
彼は「クワガタムシが好き」「虫を(よく」捕っている」と答えています。虫が好きで、虫に関心のある子なのだと思います。
そして、野田氏が佃煮にして食べる、といった話をしたときに驚いたような表情をされていましたので、おそらく虫を食べるということに大きな驚きを受けているのだと察します。
彼の質問は、
素朴な昆虫食に対する関心と、環境問題に対する関心のきっかけとなるとてもよい質問です。
しかし、司会の方は
「タンパク質危機が訪れて、昆虫を食べなくてはいけなくなる」という方向付けをして、候補者4名に振ってしまったのは、大変残念なことです。
これをまともに受け、岸田氏は「虫を食べる時代は来ない」「みんなが協力して頑張らなければならない」などと述べ、
忍耐を強いる先に昆虫食を置くような発言は受け入れがたく、前時代的な偏見と思います。
虫を食べなければいけない、という時代は来ません。
むしろ
虫も食品として食べられる時代が来る ということです。
豊かな日本の食文化の1つとして、食の選択肢の1つとして、豊かな自然の恵みとなる食材として、昆虫を捉える、ということです。
こういった誤解や偏見が生じる原因は、昆虫を食べることに対する強い拒否反応があるのだと思います。
昆虫を食べることに限らず、これまで食べなかった物に対する拒否感は非常に強固のように思われます。
しかし、実は決してそうでもないことは、時代が証明しています。
下魚であったマグロは今や高級食材に、タブーであった牛肉は今や人気食材に、刺身・寿司文化は今や海外に。
我々の固定観念とは裏腹に、食文化は常に変化自在なのです。
河野氏が述べたように、大豆肉が日本に普及しつつあります。
私たちが日常食としてお肉のように大豆肉を食するのは、時間の問題でしょう。
日清のカップヌードルの「謎肉」に限らず、十年以上前から大豆ミートはひっそり国内で販売されていました。今のような注目のされ方は皆無でした。
ヘルシーで、ちょっとおしゃれな肉料理として、大豆を食べる時代が来るとは、十年前に誰が想像したでしょうか。
さらに、これは特に強調しておきたいことなのですが、
日本は先進国の中でも豊富な昆虫資源を誇っています。 そして、昆虫学は、世界の中でも日本のお家芸といってもよいくらい優れた知見の蓄積があるのです。
昆虫の研究は、今も基礎科学を支えているだけでなく、食糧、環境、医療あらゆる生活の基盤を支える科学技術を生み出してきました。
実際、
内閣府主導の「ムーンショット型研究開発制度」では、昆虫の食料化、飼料化がプロジェクトとして採択されています。
ムーンショットは、有数の研究機関に巨額の研究費を投入し、我が国発の破壊的イノベーションの創出を目指す政府主導の巨大プロジェクトです。
この中の目標には、持続的な食料供給産業の創出が掲げられています。
10テーマもの様々な食料供給手段の研究があるなかで、昆虫の食料化を目指すプロジェクトは2つも採択されています。
岸田氏をはじめ、候補者の方々は政府のこういった姿勢をご存じの上で述べられているのでしょうか。
牛や豚のみに食糧生産を頼る方法が破綻していることは、もはや時代の流れです。
岸田氏のいう牛や豚を守るために自然を守りたいというならば、新しい生産手段を開発しなければなりません。
昆虫食の研究は、国内外で急速に進みつつあります。
しかし、海外で昆虫食が流行っているから、日本もつづけ、ではありません。
豊かな昆虫資源を保持する日本だからこそ、昆虫を活かしていけるのです。
せっかく昆虫食に興味を持ったタカオミ君。
「昆虫は子供のお遊び」ではなく、このような夢と可能性に満ちた昆虫の世界を見せてあげるべきだったと思います。
総裁候補者にそういった日本に必要な戦略を描いてくれる人が一人もいなかったのは、残念なところでした。
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総裁候補4人の回答を以下に要約しておきます(回答順)。
河野氏
・食料危機が起こり、虫を食べないければいけない時代には、ならないようにしたい。
・大豆や培養肉によるタンパク質生産の技術が進んでいる。
・一方で虫を食べるのが流行っている。いろんなところで売っているのでチャンスがあったら試してみて。
岸田氏
・みんなで努力すれば虫を食べなくて済む時代を維持することができる。
・牛肉をはじめとするタンパク質を食べていくためには、自然を守っていかなければならない。
・タカオミくんが大人になる頃には、間違いなく虫を食べるような時代はこないと信じているが、それを続けられるかどうかは努力が必要。
高市氏
・今でも虫が大好きな方々がいて、伝統的に、虫を食べている県もある。
・栄養価もあります。虫の自動販売機も最近できた。
・タカオミくんの心配は、大きな気候変動で食料が得られなくなってくることと思うが、植物工場や魚の陸上養殖も進んでいる。その年によって変わる作物も冷凍加工食品にしておくなどの工夫もしている。
野田氏
・醤油と砂糖で煮て食べるとまあまあ美味しい。一回チャレンジしてみてください。
・肉や野菜を作ってくれる人たちが減ってきていることが心配。
・一人でも多くの人がそういった仕事に参加して、自分の食べ物は自分で作れるような国を作ってほしい。
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